異物検査ラインにセンサーを導入してコスト削減

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製品の品質を保持するためには、精度の高い検査が必要です。しかし、精度の高い検査には人件費などのコストがかかります。ですが、異物検査にセンサーを用いれば、人件費のコストダウンや製品の品質向上、生産効率の上昇などが見込めるかもしれません。

ここでは異物検査に使われるセンサーがどのようなものかを紹介し、導入におけるポイントやメリットをご説明します。

注射材の異物検査の方法について

製品の製造現場では、不良品の発見はとても重要な業務です。しかし、人間の力だけで不良品を確実に見つけ出すことはとても難しい、手間のかかる作業とも言えます。製品の品質や見た目の検査にどれだけ注意しようとも、ヒューマンエラーは起こりえます。

中には、人の力では見つけることができない異物も存在しているからです。そこで、製造現場では異物検査用のセンサーが注目されています。異物検査にセンサーを使えば、問題のある製品をより確実に見つけられるほかに、次の3つのメリットがあります。

異物検査をセンサーで行うことで、従来よりも高いレベルでの検査ができ、不良品が出荷されるトラブルを防げます。もちろん熟練した人間の作業能力は高く、検査能力も正確です。しかし、センサーを使えば、人間の目では調べられない製品内部や極めて小さな異物まで検査できます。

機械で画一的に検査するため、ヒューマンエラーや個人の能力差による仕事のばらつきが発生しません。そのため、良質な製品を出荷できるようになり、製品の品質が向上します。

人の力による異物検査では検査ができない製品や部位があります。また、高いレベルの品質を保持するためには何度も検査を行わなければなりません。そのため、異物検査には多くの時間と人員が必要です。ですが、異物検査をセンサーで行えば、従来の検査をより短い時間でかつ多くの人員を必要とせずに済ませられます。

これまで何重にも検査作業をしていたならば、その手順を減らすことも可能です。このような理由から、異物検査にセンサーを導入すると作業時間の短縮が期待できます。

異物検査はセンサーを使って自動化することも可能です。検査ラインが自動化すれば、検査員の人数を減らせます。加えて、異物をセンサーによって早期発見できるなら、検査工程の見直しで更に余剰な人員をカットできます。

また、人員はカットするだけでなく、必要な工程に再割当ても可能です。余分になった人員を他の労働に充てられるようになるので、作業効率の向上が見込めます。

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異物検査では表面に付着した汚れや異物だけでなく、内部に深く入り込んでいて肉眼では見つけられない異物も探せます。検査には金属検出機やX線を使い、製品の内部に異物がないかを確かめます。幅広い用途で使えるため、現在ではさまざまなジャンルの検査に利用されるようになりました。

特に安全が重視される食料品の生産現場では、異物検査は欠かせない作業です。パッケージに使われるトレイや紙容器などに異物がないかを調べる際にも、センサーは使われています。では、異物検査にはどのような検査方法が用いられているのでしょうか。

代表的な3つの検査方法とそれぞれの方法で見つけられる異物について説明します。

X線検査では、主にガラスや石、骨や貝殻、金属類といった異物を見つけられます。他にも、硬質プラスチックやゴム類が混ざっていないかも調べられます。また、製品が割れやヒビといった問題を抱えていないかを調べることも可能です。

X線検査の仕組みはレントゲン写真によく似ており、X線をレーザーのように照射し、その波長の長さを調べることで異物を検知します。X線検査は完成製品の非破壊検査やパッケージ済みの製品の内部検査に便利です。食品や飲料の内部に異物が混在していないかを調べる際にも用いられます。

金属検出機は異物検査でもっとも多く使われています。金属検出機は磁力線によって異物を検出します。磁力線の中を金属が通過すると金属に反応して磁力線に変化が起きるので、その変化を利用して異物の混入を見つけるシステムです。

サビ状になった金属、針金やアルミ箔などが検出できます。金属検出機はX線検査と同じく製品を壊しません。また、触れることなく内部の検査が可能です。そのため、製品の衛生状態を保ちやすく、検査後にすぐ出荷もできます。

異物検査ではその外側についた汚れなども調べなければなりません。この作業は外観検査と呼ばれ、品質保証においてとても重要な検査です。画像センサーはカメラを利用して外観検査をします。人の目で行っていた作業をデジタル化したもので、撮影したデータを分析してその製品の合否を決定します。

そのため、検査済み製品の品質にムラがあまり出ません。検査のスピードアップだけでなく、ヒューマンエラーの防止にも効果があります。外観検査は全数検査が求められやすいため、画像センサーの導入が増えています。画像センサーは角度や光の加減などに惑わされにくく、人の目ではよく見えない傷や異物を高レベルで発見できます。

近年ではカメラの画素数や画像処理の方法が発達しました。そのため、より肉眼では見つけづらい微細な異物や欠陥を発見できるようになっています。

異物検査にセンサーを用いることで製品への異物混入を防ぎ、傷や汚れといった不良品の排除が簡単にできるようになりました。センサーの導入は、製産コストや人件費を抑制する効果もあります。しかし、センサーを導入するだけでなく、生産ラインや検品ラインを自動化することでより効率的に生産コストや人件費を改善できる可能性があります。

検査を自動化することの最大のメリットは、検査結果の安定性と連続した検品が可能になることです。人員を多く使った検査では、検査ラインを稼働させる時間の長さに応じてにコストが発生しました。しかし、センサーを用いて検品ラインを自動化すれば、人員のコストを気にすることなく、24時間検品ラインを稼働させることもできます。

昨今のプログラム技術の発展はめざましく、目視や人の手に頼らざるを得なかった特殊な異物検査でもセンサーによる自動化ができるようになってきました。特に人工知能(AI)を用いた異物検査のシステムは機械学習によって、想定していない異物を発見した場合でも判定が可能です。

また、検査をする製品が変わっても、学習モデルや追加学習によって対応ができます。このようなセンサーを用いれば、人件費や生産コストを削りつつ、拡張性が高く精度の高い異物検査システムを構築できるかもしれません。